低温調理ナビ厚みで計算する
63℃ / 30 MINUTES

低温調理の63℃・30分って何?湯温と中心温度を混同しないための考え方

「63℃・30分」とだけ書かれていると、低温調理器を63℃に設定して、肉を30分入れればいいように見えます。ここがいちばん危ない読み違いです。30分を考える前に、肉の中心が63℃へ達するまでの時間があります。

THE CLOCK STARTS LATER

肉を湯に入れた瞬間から「30分」を数えない

冷蔵庫から出した肉の中心は、当然ながら63℃ではありません。63℃に保たれた湯へ入れても、まず外側が温まり、そこから中心へ熱が伝わります。厚い肉ほど、その中心までの距離が長くなります。

そのため、公的な条件にある「中心63℃で30分」という考え方を使うなら、①中心が63℃へ達するまで、②そこから必要な時間を維持する、という二段階に分けます。低温調理ナビが「加熱到達」と「保持」を分けて表示するのも同じ理由です。

SAME 63℃, DIFFERENT ARRIVAL

鶏むねは平均68分、牛ももは平均94分。どちらも約3cmの実験

食品安全委員会が紹介する実験では、約300g・厚さ約3cmの鶏むね肉を63℃で加熱した場合、肉内部の最低温度が63℃に達するまで平均68分。その後30分の温度維持が必要で、合計約100分とされています。

同じく約300g・厚さ約3cmの牛もも肉では、63℃への中心到達まで平均94分、その後30分の維持で合計約130分です。設定温度も厚みも近いのに、中心へ届くまでの時間は同じではありません。

食品安全委員会の実験例63℃への中心到達到達後の保持合計の目安
鶏むね 約300g・約3cm平均68分30分約100分
牛もも 約300g・約3cm平均94分30分約130分

この表は固定レシピではありません。実験条件が変われば中心温度の上がり方も変わります。3cmなら必ずこの時間、と一般化しないでください。

参考:食品安全委員会「肉を低温で安全においしく調理するコツをお教えします!」

PORK HAS ITS OWN SOURCE

豚肉の63℃・30分は、厚労省の公的条件として別に確認する

豚肉については、厚生労働省の規格基準に、中心部を63℃で30分間以上加熱する方法、またはこれと同等以上の殺菌効果を有する方法が示されています。ここでも「低温調理器を63℃にして30分」ではなく、肉の中心温度の話です。

一方、鶏肉・牛肉・豚肉で、公的情報の根拠や対象がすべて同一という意味ではありません。このサイトでは「63℃・30分」という数字だけを切り出して万能基準にせず、食材ごとの公的資料と計算結果を分けて表示します。

参考:厚生労働省「食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件について」

NOT 58℃ / 28 MINUTES

「58℃・28分」を家庭のローストビーフへ置き換えない

検索すると58℃・28分という条件も見つかりますが、食品安全委員会は、これは厳格な原料管理などを前提とする「特定加熱食肉製品」に関係する条件であり、家庭で通常購入する肉へ数字だけを流用しないよう注意しています。

低温調理の数値は、数字が短くまとまっているほど覚えやすい反面、前提条件が落ちやすくなります。温度、中心到達、保持時間、肉の厚みをセットで見る方が安全です。

→ ローストビーフの57℃・58℃・60℃を整理する

COMMON MISREADINGS

63℃・30分で間違えやすいところ

63℃の湯に30分入れればいい?

違います。公的な条件を確認するときは、肉の中心が63℃へ達した後に必要時間を維持する考え方です。

30分は肉を入れた瞬間から数える?

肉を入れた瞬間からではありません。中心温度が目標へ達するまでに別の時間がかかります。

厚さ3cmなら必ず約100分?

必ずではありません。約100分は食品安全委員会の約3cm鶏むね肉の特定条件での実験例です。

牛肉も鶏肉も63℃なら同じ時間?

同じではありません。約3cmの公的実験でも、鶏むねは中心到達平均68分、牛ももは平均94分でした。

58℃・28分も同じように使える?

家庭の通常の肉へそのまま使う条件ではありません。特定加熱食肉製品の前提を落として流用しないでください。

NEXT STEP

「いつ中心に届いたか」を確認する道具が芯温計

低温調理器は湯の温度を制御しますが、肉の中心温度を直接教えてくれるわけではありません。厚みから時間を見積もりつつ、重要な場面では中心温度を測る。この役割分担を次の記事で詳しく整理しています。

→ 低温調理に芯温計は必要?

READ NEXT

「30分」の意味が分かったら、次は中心温度を確かめる

63℃・30分を固定レシピとして覚えるより、厚みと中心温度をどう確認するかまでつなげると迷いにくくなります。